●大感染
○歴史的視点における大感染
21世紀後半に起こった史上最大の個人テロ・ウイルス兵器テロであり、それ以上に人類の有り方を大きく変質させた転換として認識されている。発生から数十年で人類の政治・文化・生活は激変してしまい、悠久の歴史に根ざした価値観・倫理観を根底から覆してしまった。
○生物学的視点における大感染
大感染を引き起こしたウイルス兵器は初期段階で十数種類であったと言われるが、その設計思想から「特定世代の抹消」「ウイルスの運搬・隠匿・多様化促進」「人類改造」の3つに分類される。前2者は「人類改造」を効率的に引き起こすための支援目的で造られており、ここでは言及しない。
「人類改造」ウイルスは「生殖能力の消失・もしくは増強」「感応能力の発生」「知性の増強」「外部肉体構造の変化」「短命化」といった様々な症状を引き起こした。これは一つだけ取り出しても以前の価値観しか持たない旧世代には重すぎる変質であり、肉体・精神の変化幅以上に感情的な混乱を引き起こした。ただし、新世代においては、変化は天与のものであって旧世代ほどの混乱は見られない傾向が強い。人類は物語に縛られる生き物であるから、急激な変化は物語の破綻をもたらしたのだ。
○抹消された世代
ウイルス兵器の幾つかは老人と乳幼児の殺害を目的として設計された。老人が標的になったことについては”糞野郎”の思想によるところが大きいが、乳幼児の抹消を意図したのは「人類改造」を効果的に行うためである。次世代の担い手が急激に減少すれば不安心理を大いに掻き立て社会不安を情勢する。不安定な社会は”新人類”が跋扈する余地を与え、また同時に”補充”の必要が生じるため”旧人類”に選択を迫ることになる。「人類改造」により変化した世界を受け入れるか、さもなくば変化を拒み閉鎖的にじわじわ勢力を減らしていくか。発生から数十年たっても、二者の対立は潜在的に続いている。それでも”新世代”が勢力を広げていった以上、理屈はともかく結果として”糞野郎”の目論見は成功してしまっているのだ。
●感応
○物理的な視点における感応現象
”大感染”により発生した”物理法則の局部破綻”の一つ。極微小な2点 mA,mBの間に感応関係が発生したとき、2点間の時空差は限りなく0に近づいたように物理法則が歪められる。これを利用することで理想状態では、距離と間を隔てる空間の状態に関係なく情報の伝達が可能である。ただし、実際は物理的距離が増大するにつれノイズは増加していく。物理法則上、感応現象は「素粒子が最小空間グリッドを移動したことに変わりはない」ため、途中経路に感応現象の出力点が存在していると素粒子力学上の衝突が発生する。なお、この出力点を世間一般では”門”と呼称する。
○感応現象の多少詳細な用語
感応線...入力点と出力点を結んだ仮想の線
感応誘導力場...感応線を曲げる性質をもった仮想の力場
感応素子...感応現象を引き起こす特定の物理パターン、素粒子配置
○生物学面での感応現象
大災害により感応能力をもった人類・生物は少なからず発生したが、彼らはSFで描かれるようなテレパシストではない。感応はテレパシーなどとは違い、あくまで微小な点同士を空間的に接続する(局所的異常)物理現象として観測される。原理上は感応能力者同士が意思や心象を伝達しあうことも不可能でないが、門の位置を細胞単位で調整することは既存生物の機能を超えている。そのため、感応能力者は適切な矯正措置がとられない場合、周囲の人・生物や電子機器に悪影響を与えてしまう。電子機器も脳ミソも微細な電流パターンを用いた情報機器であることには変わりなく、多量のノイズを与えられれば影響の大小はあっても情報処理に支障が出てくる。
一般的な用法における感応能力者は脳内に感応現象の”出力機構”と”誘導機構”を両方とも持っている。これにより送信・受信を当人の知覚・思考に応じてある程度変化させることができるのだ。ただし、専門的に見れば片方の機構だけでも感応機能を持っていると言える。少なくとも、旧世代にはなかった生理構造には違いないのだ。”出力機構”だけの場合、門の位置は当人の精神・生理状態
で制御できず、周辺にある誘導力場の影響を強くうける。周囲に全く影響を与えないわけではないが、影響に纏まりがないため意識されにくい。また、当人が感応作用を受ける可能性も低い。対して”誘導機構”だけの場合、大概は意識の方向に力場を向けてしまう。弾く作用なら問題はあまりないが、導く作用を展開させている場合は周囲にある感応線を自分に誘導してしまうことになる。そのため、両機構を備えた第一種感応者と同程度に感応作用によるノイズを拾ってしまう傾向がある。また、周囲に悪影響を与えないことが多く、第一種と比べて自他が能力に気づきにくい。
国家・地域によっては感応能力の有無を強制的に調査し、必要な矯正措置をとる態勢が整えられている。「感応機構の物理的除去」「無害化素子を埋め込む」「無害化素子を持たせる」「隔離する」など、対応は社会により大きく異なる。
○感応ネット
感応現象を利用した情報伝達技術、およびそれにより生み出された情報ネットワークのこと。二者間に最低3つの感応素子コンピューターを噛ませ、生体から放射される無加工な脳電位情報を素粒子ビットに変換してから伝達、脳電位情報に変換してユーザーに入力する。利用には個人毎の脳電位傾向に即した調整が必要であるため、一昔前までは高価な個人専用機器を設置できる人しか利用できなかった。しかし技術は進歩するもので、機器の小型軽量化・量産低価格化により特別の制約なければ感応コンピューターを持てない家庭・個人はおおむね無くなったといってもいい。国家・地域によっては保有・使用を推進する施策を実行している。
●偽体
○AI
感応ITにより「生体脳の活動電位を細胞単位で記録する」ことが可能になった。パラメーターを正確に記録、蓄積していけるなら、あとはSコンピューターによる解析・シミュレートを繰り返すことで、さほど苦もなく人工知能は開発できる。集団の倫理意識が技術開発を阻害していない国・地域では、人工知能自体はすでに枯れた技術の印象するある。
そうした先進国では、培った技術の応用が進んでいる。統計モデルに基づいたシミュレートを行えば、外傷よる各種脳障害を精緻に把握し、感応コンピューターによる機能代替が可能となる。事前にデータを蓄積しておけば、極論すると「生体脳を全く用いずに同様の脳活動を再現可能」だ。もちろんと言うか、だからといって生体脳を捨て去ろうとする物好きはあまりいない。
○感応ネトゲ
感応情報ネットワークを利用したオンラインゲームという概念は、感応という概念が認識され始めた最初期から存在した。いや、感応ネットを古典的情報ネットのハイエンド版と認識するなら、発想に何ら目新しさはない。現在稼動が確認されている感応ネトゲの大半は感応技術利用による、単なる「先進的な遊び」に過ぎない。キーボードやコントローラーを用いない入力、HMDを用いずに五感すら再現できる出力、地球と月すらほとんど時間差なく繋げる超光速通信、ちょっとした空間なら素粒子単位でシミュレートできる演算能力、人間そのものに等しいNPC……それらのどれもが”大感染”前には実現
できなかったことであり、飛躍的な進歩には間違いない。
しかし、進みすぎた技術がもたらす可能性の果てを思考するなら、もっと別の次元も見えてくる。「人間を丸ごとシミュレートできるなら、生身でいなくてもよいのではないか?」「感情すら演出として操作することはどうか?」「人間に近いNPCと人間はどのような関係を築けるのか?」「素子脳を用いるなら、生体脳の限界には制約されない」……そういった思考は、多くの国・地域ではただの思考実験に留まる。実現することは、社会的に許されない。しかし、”大感染”により多様化した人類の生活形態は、ある種の異常・逸脱に生息地を与えることがある。旧世界の価値観を色濃く残す地域なら決して実行されないような可能性も、どこかで試されることがある。
人間の尊厳を試すようなネトゲも、少なからず存在する。
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眠いで打ち止め\(゚ワ゚)/
明日シヌ\(゚ワ゚)/
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